腕時計が急に進む、遅れる、止まるといった症状が出たときは、磁気の影響も確認項目の一つです。スマートフォン、スピーカー、マグネット式のバッグや充電器など、身近な製品にも磁気を発生する部分があります。
ただし、機械式時計とアナログクォーツでは、磁気を受けたときの現象や磁気源から離した後の状態が異なります。方位磁針だけで磁気帯びを断定せず、症状が続く場合はメーカーや修理窓口へ相談することが大切です。
注意:本記事の「5cm」は、シチズンが一般的な強さの磁石について示す目安です。セイコーは身近な磁気製品から5~10cm以上離すよう案内しています。製品や磁気の強さによって影響は異なるため、耐磁時計でも磁気源へ意図的に近づけないでください。
この記事で確認できること
- 腕時計が磁気から受ける影響
- 機械式・アナログクォーツ・デジタルクォーツの症状の違い
- 耐磁1種と耐磁2種の基準
- SARY269・SBGX261・AQ4100-22Aの仕様
- 磁気帯びが疑われる場合の確認順序
- 購入前と修理依頼前に確認する項目
腕時計の磁気帯びとは
機械式時計では、強い磁気の影響によって内部部品が磁化し、てんぷやひげぜんまいの動きが乱れることがあります。その結果、通常より大きく進む、遅れるといった精度異常が起こる可能性があります。
アナログクォーツ時計は、針を動かすステップモーターに磁石を使用しています。外部の強い磁気によってモーターが正常に動けなくなると、一時的に止まる、進む、遅れるなどの症状が生じます。磁気源から離すと正常な動きに戻る場合がありますが、時刻やカレンダーは合わせ直す必要があります。
一般的なデジタルクォーツ時計は、磁気の影響を受ける部品がないため、セイコーとシチズンは基本的に磁気の影響を受けないと説明しています。ただし、デジタル表示と針表示を組み合わせた時計では、アナログ部分が影響を受ける可能性があります。
駆動方式ごとの症状と対処を比較
| 駆動方式 | 起こり得る症状 | 磁気源から離した後 | 症状が続く場合 |
|---|---|---|---|
| 機械式 | 進み・遅れなどの精度異常 | 磁気が残り、精度が自然に戻らない場合がある | 専用機器による検査、脱磁、必要に応じて精度調整 |
| アナログクォーツ | 一時的な停止、進み、遅れ | 正常動作へ戻る場合があるが、時刻と日付は要確認 | 基準位置や時刻を確認し、改善しなければ点検 |
| デジタルクォーツ | 一般的には影響を受けにくい | 通常は特別な操作を必要としない | 異常があれば磁気以外の原因も含めて点検 |
| アナログ・デジタル複合 | 針表示部分にずれや停止が起こる可能性 | 針の基準位置を確認 | 取扱説明書に従って基準位置を修正、改善しなければ点検 |
この表は、磁気による症状を断定するためのものではありません。電池切れ、充電不足、衝撃、油切れ、部品の摩耗などでも、似た症状が起こることがあります。
耐磁1種・耐磁2種と距離の目安
シチズンの公式解説では、JIS規格による第1種耐磁時計は、直流磁界4,800A/mに耐え、日常生活で磁気を発生する機器へ5cmまで近づけても、多くの場合に性能を維持できる水準です。
第2種耐磁時計は、直流磁界16,000A/mに耐え、磁気を発生する機器へ1cmまで近づけても、多くの場合に性能を維持できる水準です。ただし、これは磁気源へ密着させてよいという意味ではありません。磁気の強さは製品と接触位置によって異なるため、可能な限り距離を取ります。
- スマートフォンのスピーカー部分へ時計を重ねない
- タブレットカバーやバッグの磁石へ時計を密着させない
- ワイヤレス充電器やスピーカーの上へ時計を置かない
- 磁気ネックレスや磁気健康器具と一緒に保管しない
- 就寝時もスマートフォンと時計を重ねて置かない
3型番の駆動方式と耐磁表示を比較
耐磁性能は、ブランド名やシリーズ名だけでは判断できません。ここでは、公式製品ページで仕様を確認できる3型番を比較します。
| 型番 | 駆動方式 | 公式の精度・持続時間 | ケースサイズ | 防水 | 公式の耐磁表示 |
|---|---|---|---|---|---|
| セイコー プレザージュ SARY269 | 機械式自動巻き・手巻き付き Cal.4R35 | 日差+45秒~-35秒 最大巻上時約41時間 | 横39.5mm 厚さ12.0mm | 5気圧 | 「耐磁あり」 製品ページに数値の記載なし |
| グランドセイコー SBGX261 | 電池式クォーツ Cal.9F62 | 年差±10秒 | 横37.0mm 厚さ10.0mm | 10気圧 | 4,800A/m 公式グローバル仕様 |
| ザ・シチズン AQ4100-22A | 光発電エコ・ドライブ Cal.A060 | 年差±5秒 パワーセーブ時約1.5年 | 横38.3mm 厚さ12.2mm | 10気圧 | JIS1種耐磁 4,800A/mの水準 |
SARY269は公式製品ページで「耐磁あり」とされていますが、そのページにはA/mの数値が掲載されていません。そのため、別製品や一般的な基準から数値を推測していません。
SARY269を購入候補にする場合の販売例です。購入前に型番、在庫、保証内容を商品ページで再確認してください。
SBGX261とAQ4100-22Aはどちらもアナログ表示です。クォーツまたは光発電であっても、磁気を発生する製品へ密着させない使い方が基本です。
SBGX261を購入候補にする場合の中古販売例です。販売店はAランク、純正ボックスと保証カード付きと説明しています。購入前に実物写真、傷、腕回り、保証内容、在庫を確認してください。
AQ4100-22Aを購入候補にする場合の新品販売例です。店舗との共有在庫で、注文後に在庫確認が行われます。購入前に在庫、保証登録の条件、付属品を確認してください。
磁気帯びが疑われるときの確認順序
- 磁気源から離す:スマートフォン、スピーカー、バッグの留め具、充電器などから時計を離します。
- 基準の精度を確認する:機械式はメーカーの携帯精度、クォーツは取扱説明書の精度を確認します。
- 時刻と日付を合わせ直す:アナログクォーツは、磁気源から離した後に時刻とカレンダーを再設定します。
- 一定期間の差を記録する:同じ時刻源を使い、何時間または何日でどの程度ずれるか記録します。
- 改善しなければ点検を依頼する:機械式で大きな進みや遅れが続く場合は、脱磁や精度調整の要否を確認します。
時計を分解したり、市販の脱磁器を製品へ繰り返し使用したりすると、別の不具合や誤操作につながる可能性があります。具体的な作業方法が取扱説明書にない場合は、自分で内部作業をせず、メーカーや時計修理店へ相談してください。
方位磁針だけでは磁気帯びを判定できない
方位磁針を時計へ近づけ、針が動いたことだけで磁気帯びを断定する方法は適切ではありません。時計のケースやバンドには磁性を持つ金属が使われる場合があり、アナログクォーツの内部にはもともと磁石を使用する部品があります。
セイコーとシチズンは、磁気の検査には専用の測定器が必要であり、方位磁針は判定用の検査器具として適さないと説明しています。修理を依頼するときは「方位磁針が動いた」という情報だけでなく、1日当たりの進み・遅れ、停止の有無、発生時期、近くに置いていた機器を伝えると状況を整理しやすくなります。
購入前と修理依頼前に確認すること
購入前の確認
- 型番が一致しているか
- 公式製品ページや取扱説明書に耐磁表示があるか
- 「耐磁あり」「1種耐磁」「2種耐磁」など、どの表記か
- 機械式、電池式クォーツ、光発電などの駆動方式
- ケースサイズ、防水性能、保証条件
- 中古品では精度、電池交換歴、点検歴、磁気帯びの検査歴
修理依頼前の確認
- いつから症状が出たか
- 1日または1週間でどの程度ずれるか
- 止まる、進む、遅れるのどれか
- スマートフォン、スピーカー、磁石付き製品へ密着させた可能性
- 落下や衝撃、浸水、充電不足、電池切れの可能性
- 保証書、購入証明、過去の修理明細の有無
脱磁だけで改善するか、精度調整や内装修理も必要かは、実物の測定と点検によって決まります。受付範囲や料金はメーカー、販売店、修理店によって異なるため、依頼前に確認してください。
よくある質問
スマートフォンの近くへ置くだけで必ず磁気帯びしますか?
必ず起こるとは限りません。磁気の強さ、時計との距離、接触位置、時計の耐磁性能によって影響は変わります。ただし、スピーカー部分や磁石を使うアクセサリーへ時計を密着させない方が安全です。
耐磁時計なら磁石へ近づけても問題ありませんか?
耐磁性能には水準があります。JIS1種や2種は所定の試験条件に対する性能であり、あらゆる磁気製品への密着を保証するものではありません。耐磁時計でも、磁気源から距離を取ってください。
機械式時計の大幅な進みは磁気帯びですか?
磁気帯びは原因の一つですが、衝撃、油の状態、部品の不具合などでも精度は変化します。専用測定器による検査なしに断定せず、日差を記録して点検を依頼します。
クォーツ時計は磁気帯びしませんか?
アナログクォーツは、強い磁気によって針を動かすモーターが一時的に影響を受ける場合があります。磁気源から離した後に正常へ戻っても、時刻と日付がずれていないか確認してください。
自宅で脱磁してもよいですか?
製品ごとに構造や注意事項が異なります。メーカーが取扱説明書で案内していない作業は行わず、症状が続く場合はメーカーまたは修理店へ相談する方が確実です。
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調査方針
本記事は、セイコー、グランドセイコー、シチズンの公式製品情報、取扱情報、耐磁性能の解説を優先して作成しています。型番ごとの仕様は、それぞれの公式ページに記載された内容を照合しました。
筆者は掲載した時計の磁気測定、脱磁、分解、精度測定、実物の試着を行っていません。症状と対処は一般的な確認手順であり、個別の時計の故障原因を診断するものではありません。価格、在庫、保証、修理受付条件は変更されるため、購入時または依頼時に各窓口で確認してください。
記事内またはアイキャッチにAI生成画像を使用する場合、その画像は説明用です。実在商品の仕様、寸法、耐磁性能、適合性、磁気測定や修理作業を示すものではありません。
参考情報
- セイコーウオッチ「磁気」
- シチズン「磁気についての注意」
- シチズン「耐磁性能」
- セイコー プレザージュ SARY269 公式製品情報
- グランドセイコー SBGX261 公式製品情報
- グランドセイコー SBGX261 公式グローバル仕様
- ザ・シチズン AQ4100-22A 公式製品情報
更新履歴
- 2026年10月28日:メーカー公式情報を基に全面改稿。駆動方式別の症状、耐磁基準、3型番の比較、5cmの目安、確認手順、FAQを追加しました。

